現在の宇宙ビジネスを理解する上で欠かせないのが、以下の3つのキーワードです。
① SpaceXのIPO観測と「市場の再評価」
2026年、市場の関心は一点に集中しています。イーロン・マスク氏率いるSpaceXのIPOです。企業価値が1.5兆ドル(約225兆円)を超えるとされる同社が上場、あるいは通信事業「Starlink」が分社化・上場するとの憶測が、セクター全体の株価を押し上げています。これは、かつてテスラがEV(電気自動車)市場を一般化させたのと同様の**「カテゴリー・キラー」による市場の再定義**が起きようとしていることを意味します。
② アルテミス計画と「月面経済圏」の誕生
NASA主導の有人月探査「アルテミス計画」は2026年に大きな節目を迎えています。有人月周回飛行「アルテミスII」の実施や、民間企業による月着陸船の打ち上げが相次ぎ、月面での通信インフラやエネルギー供給、さらには「月面原子炉」の開発といった具体的な商談が動き出しています。
③ 「宇宙 × AI」:軌道上コンピューティング
地上でのAIブームは宇宙へと波及しました。膨大な衛星データを地上に送るのではなく、宇宙空間でAIが処理・解析を行う「宇宙データセンター」の構想が本格化。NVIDIA(エヌビディア)などの半導体大手も宇宙スタートアップとの連携を強めており、**「宇宙はAIの新たなインフラ」**という認識が広まっています。
2. 【米国株】世界をリードする「宇宙の精鋭」銘柄
宇宙開発の覇権を握るアメリカでは、防衛大手から新興スタートアップまで層の厚い銘柄群が存在します。
ロケット・ラボ(Rocket Lab / RKLB)
SpaceXに次ぐ「世界第2位」の打ち上げ実績を持つ企業です。2026年の注目は、新型の中型ロケット「ニュートロン(Neutron)」の本格運用。これにより、従来の小型衛星だけでなく、大型衛星の打ち上げ市場にも食い込みます。衛星製造から運用までを一気通貫で行う「宇宙垂直統合」モデルが強みです。
プラネット・ラボ(Planet Labs / PL)
世界最大級の地球観測衛星群を運用。毎日、地球の全陸地をスキャンする膨大なデータを保有しています。2026年は政府系契約の大幅増に加え、農業・金融・環境監視(ESG)向けのAI解析サービスが収益の柱として急成長しており、純利益の黒字化が期待される銘柄です。
イントゥイティブ・マシーンズ(Intuitive Machines / LUNR)
民間企業として初めて月面着陸に成功した実績を持ち、アルテミス計画における月面輸送の「本命」と目されています。月面での通信インフラ構築やデータセンター事業など、探査を超えた「月面ビジネス」を展開しています。
ノースロップ・グラマン(Northrop Grumman / NOC) / ロッキード・マーチン(LMT)
安定感を求めるなら、米軍の宇宙戦略を支える重鎮たちです。ミサイル防衛や軍事通信衛星の受注が過去最高水準に達しており、ディフェンシブな宇宙銘柄として選好されています。
3. 【日本株】政府の「宇宙戦略基金」が追い風に
日本政府は、宇宙産業を2030年代早期に8兆円規模へ倍増させる目標を掲げ、10年間で1兆円規模の「宇宙戦略基金」を創設しました。これにより、日本の宇宙ベンチャーやサプライヤーには空前の資金が流れ込んでいます。
ispace(アイスペース / 9348)
日本発の月面探査ベンチャー。2026年には「ミッション3」の打ち上げを控え、月面への物資輸送サービスを本格化させています。JAL(日本航空)との協業など、宇宙と地上の物流を繋ぐ壮大な構想が投資家の注目を集めています。
QPS研究所(5595)
小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を手掛けます。夜間や雲があっても地表を撮影できるSAR技術は、安全保障や災害対策での需要が激増。36機の衛星網による「準リアルタイム観測」の実現に向けた進捗が株価の鍵を握ります。
三菱重工業(7011) / IHI(7013)
H3ロケットの開発を主導する、日本の宇宙開発の屋台骨です。H3ロケットの打ち上げ成功率が安定し、海外からの商用打ち上げ受注が軌道に乗れば、重工セクター全体の再評価に繋がります。
4. 投資家が注意すべき「3つのリスク」
宇宙株は大きな可能性を秘めていますが、以下のリスクも理解しておく必要があります。
- 打ち上げ失敗リスク: 1回の事故が、企業の信頼性と株価に壊滅的な打撃を与える可能性があります。
- 資金調達(希薄化)リスク: 宇宙ビジネスは莫大な先行投資が必要です。収益化前に増資が行われ、一株あたりの価値が下がるケースが散見されます。
- 地政学リスク: 宇宙空間でのルール整備(宇宙ゴミや軍事利用)に関する国際的な緊張が、特定のプロジェクトの停滞を招く恐れがあります。
5. まとめ:2026年は「選別投資」の時代へ
かつての宇宙株は「将来の夢」で買われていました。しかし2026年は、**「誰が実際に月へ運び、誰がデータを収益化しているか」という実績(トラックレコード)**で買われる時代です。
SpaceXのIPOという世紀のイベントを控え、市場の熱気は最高潮に達しようとしています。短期的にはボラティリティが高いセクターですが、長期的な視点で見れば「人類の活動領域の拡大」に投資する、最もエキサイティングな分野と言えるでしょう。