2025年現在、再びアメリカで「政府閉鎖(Government Shutdown)」の可能性が取り沙汰されています。この事態は、日本ではあまり馴染みがないものですが、アメリカの政治や経済、国民生活に大きな影響を与える重要な出来事です。本記事では、政府閉鎖の仕組みや原因、影響、そして今後の見通しについて解説します。
政府閉鎖とは?
アメリカの政府閉鎖とは、連邦政府が予算(歳出法案)を議会で可決できない場合に、一部の政府機関の業務が停止される状態を指します。これは主に、議会(上院・下院)と大統領の間で予算案に関する合意が得られなかったときに発生します。
通常、連邦予算は毎年10月1日から始まる「会計年度」の開始前に成立する必要がありますが、これが間に合わない場合、政府機関の運営資金が途絶えるため、一部業務がストップします。
なぜ政府閉鎖が起こるのか?
政府閉鎖の主な原因は、政党間の対立です。アメリカでは現在、上下両院や大統領の所属政党が異なる場合が多く、政策や支出方針を巡って激しい意見の対立が生じます。よくある対立の例としては:
- 社会保障や医療保険の支出拡大 vs 財政均衡
- 国境警備や移民政策に関する支出
- 教育、環境政策、軍事予算などの優先順位
- 債務上限の引き上げ問題
特に近年は、**超党派の合意形成が困難な「分断政治」**の傾向が強まっており、政府閉鎖のリスクは常に存在しています。
政府閉鎖が引き起こす影響
政府閉鎖が発生すると、次のような影響が出ます:
1. 一部の政府機関が業務停止
- 国立公園や博物館が閉鎖される
- IRS(国税庁)の業務が停止し、税金の処理が遅延
- 新規のビザ・パスポート発行が停止する場合も
2. 連邦職員への影響
- 数十万人の連邦職員が一時帰休(furlough)に
- 「必要不可欠」な職種(空港管制官、FBIなど)は勤務を続けるが給与は一時停止
3. 経済への悪影響
- 経済成長の鈍化(政府支出の一時的減少)
- 投資家心理の悪化、株価の不安定化
- 中小企業や契約業者の収入が減少
歴史上の代表的な政府閉鎖
年度 | 日数 | 主な争点 |
---|---|---|
1995-96年 | 21日 | 医療保険改革、予算削減 |
2013年 | 16日 | オバマケア(医療保険制度改革) |
2018-2019年 | 35日(史上最長) | 国境の壁建設費用を巡る対立 |
今後の見通しと回避策
政府閉鎖を回避するためには、議会で「暫定予算(Continuing Resolution)」を通過させ、一定期間だけ政府機関の運営を継続させる方法が取られます。あるいは、与野党が本予算案について合意することで、正式な歳出が可能になります。
ただし、選挙前や政権交代期などは政治的駆け引きが激しくなるため、合意形成が難しくなる傾向があります。2025年秋現在も、関税を巡って議会が膠着状態にあり、政府閉鎖のリスクは高まっています。
結論
アメリカの政府閉鎖は、単なる行政手続きの問題ではなく、国家の政治的分断や財政運営の脆弱性を浮き彫りにする現象です。その影響は国民生活から世界経済にまで及ぶため、世界中がその動向に注目しています。
今後もアメリカ政治を読み解くうえで、政府閉鎖の仕組みと背景を知っておくことは重要です。